会社文化をもみほぐす#06 「心理的安全Barフジツボ」Part2 一日店長はZ世代

池田 智子 / Tomoko Ikeda Fujitsu Works
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富士通には定時後にゆるっと開店するオンラインBarがあります。その名も「心理的安全Barフジツボ」(以下「Barフジツボ」)。
このイベントのディレクターかつデザイナーの視点で、見てきた風景やその時々の思いなどを綴りつつ、企画のツボを探っていきます。

(ここまでの概要)
組織も階層も違う有志で始めた社内イベント「心理的安全Barフジツボ」。お酒を交えたフラットで楽しい交流の様子を社内にお届けしつつ、カチコチの大企業文化をもみほぐしています。ちなみに毎回違う社員を一日店長としてお招きし、一緒に企画を練る仕組みを採用。Part1(=第1回目)の一日店長は、キャリア入社一年目のおかぴちゃん。「社内に友達を増やしたい!」という彼女の思いを応援すべく、その元気な魅力を前面に出した内容で大いに盛り上ることができました。勢いに乗ったメンバーは次なるチャレンジを求め、Part2(=第2回目)の企画に挑みます。

「Barフジツボ」Part2で一日店長として選ばれた方はZ世代。今どきの若手らしい価値感を活かした内容にしたいところ。
あなたなら、どのように企画を進めますか?


今回は、イベント実施までの”企画の実際”について、主に書いてみます。
何か新たな企画や提案をしてみたい皆さまのご参考になればと思います。

Director, Designer池田 智子
Graphic Designer寺西 広太郎
Produceフジツボプロ(「心理的安全Barフジツボ」メンバーズ)

「心理的安全Barフジツボ」Part2の一日店長は、入社二年目ほやほや(当時)の 淺間康太郎さんです。今イベント史上初、Z世代の一日店長の誕生です。
果たして、若手社員が「Barフジツボ」の場を使って言いたいこと、実現したいものとは何か?
主役のありたい姿を形にすべく企画がスタートします。

①インタビューで一日店長の価値感や思いを知る

企画の始まりはインタビューから。まずは淺間さんの価値感を知ることに注力します。
淺間さんがイベントを通じて実現したいことは、同期などの若手社員が会社に対して感じる不満を解消することでした。また、一日店長は一緒に出演するゲスト役員を選ぶことができる(役得)ものの、淺間さんはこの役員選びに関心を示しません。普段から尊敬しているふくちゃん(福田CDXO/CIO)以外の経営層とは、特に話してみたいと思わない、とのことでした。

(余談:こうした淺間さんの思いの中に、私は勝手ながら今どきの若手らしい価値観というものを感じ取りました。それは組織の上下関係より、仲間意識を持てる人とのフラットな関係を重視すること。つまり縦のつながりより、横のつながりを大事にすることです。これからの世界を担う若手の皆さんは、心のつながりを大事にする、忖度のない新しい良い組織を作っていってくれそうですね◎)

…ということで、ふくちゃんと一緒にお店に来てくれるゲスト役を誰にするかを含め、企画を立てることになりました。「Barフジツボ」でゲストとして役員以外の方をお招きした例は過去にありません。しかしながら、その時ベストと思えることにチャレンジするのがフジツボ流です。初の試み、大歓迎です。

②一日店長の価値観や思いから、やりたいことを企画におとす

淺間さんの実現したいことの方向感は分かりました。

ではそのモヤモヤした思いを、どうやって企画に落とし込んでいくか?

ここでは、デザイナーとしてクライアントに対し、日々実施しているアプローチが役立ちます。それは対話の中での気づきを、言葉や図を使って見える化し、検証・修正を繰り返しながら明確にしていく方法です。

淺間さんのサポーターとして、Yammer(社内SNS)上の若手向けのスレッド「わかてちゃんねる」のオーナー、猪瀬祐司さん(後に「いのせさん」として「Barフジツボ」の番記者に就任)にも加勢いただき、若手社員の不満を図にしていきます。(下図)。

淺間さんのモヤモヤをADKAR®モデル(※)で理解。若手にDesireがないことが問題の根幹だと気づく

(※ADKAR®はProsci社が定義した個人の行動変容モデルです。淺間さんはProsci Change Practitionerの資格も保有されてます。)

若手がDesireを持てない原因=自分の価値・強みがわからないこととして、その理由を深堀してみた図

図式化しながら理解を深めていった結果、若手の働きにくさを解消するために対話すべき人(=ゲスト出演いただく方)は、ミドル層(中間管理層)がふさわしいという結論にいたりました。

★企画のツボ:モヤモヤの具体化は、対話中の気づきを言葉や図にして検証・修正の繰り返し

ところで、出演いただくミドル社員をどうやって探すか?

富士通では社内SNSとしてYammerが活発に活用されており、これが情報取得以外にも人材探しツールとして役立ちます。当時開設されたばかりで、注目を集めつつあったのが「シン・ミドル」という名のスレッド。中間管理層の有志が情報共有したり、匿名で寄せられた問題に対し、みんなで解決法を考えるなど、意識高めの活動が活発に行われています。こちらのコミュニティの創立メンバーである、ウランちゃん(井川千春さん)、きのぴー(木下祐史さん)、せーじろさん(植木誠二郎さん)の三名に、ミドル代表として出演いただくのはどうだろう?ということになりました。

③企画書を作成し、ゲストとの出演交渉や、メンバー間の意思疎通に活用する

シン・ミドルのみなさんに出演依頼させていただくにあたり、企画書(下図)を作成。企画の背景や思いを、つい見たくなる・パッと見ですぐ理解できる形にしました。この企画書を元ご説明することで、サクっと出演のご快諾をいただくことができました。

「Barフジツボ Part2」企画書より抜粋。右上のイラスト(グラレコ)は、おかぴちゃん作

ちなみにこうした企画書は、所属も仕事もバラバラの「Barフジツボ」メンバーの思いを一つにするのにも役立っています。テレワークやハイブリッドワーク時代は、非同期のチャットがコミュニケーションの中心です。そんな中で人に振り向いてもらい、同じゴールに向かって意識合わせする手段として、今回の企画書のようなもの=見た目でモチベーションが上がり、内容が楽に理解できる仕掛けはキーになると思います(前回特集したグラレコも、今の時代にぴったりのコミュニケーション手段ですよね)。

★企画のツボ:楽しく簡潔に伝わる資料は、提案時はもちろん非同期コミュニケーションにも有効

④イベント実施に向けて全員で準備

出演者がそろったところで、イベント開催日が決定します。その後はWBSが引かれ、グラフィック等の資材づくりや広報活動が続きます。企画書やチャットを通じてメンバー間でざくっと意識合わせしてありますので、特に会議を開かずとも、各々が自分のペースで作業を進めてくれます。

意外に毎回手こずるのが、イベントのコピー決定です。メンバー全員がいるチャット上でアイデアを出し合い、今回は淺間さんが最終的に以下に決めてくれました。


“若手×ミドル、本音でぶつかる喋りBAR ー「最近の若いやつは…」を最近の若いやつと語る”

イベント当日について

今回の記事は、イベント実施までの企画の流れを中心に書いてみました。
ところでイベント当日はどうなったか?はい、もちろん盛り上がりましたよ◎

当日の様子。ふくちゃんが参考にする「尊敬できるリーダーの要素14選」も登場!

話題例:
「最近の若いやつは・・・?」→ミドルと感覚が違う、すごい。
「イケてるミドル/イケてないミドル」→認識を更新し続けている人はイケてる、昔話する人はイケてないw、など。

お酒を交えながら様々な意見が交わされました。

詳細はグラレコをご覧ください!!

イベント当日のグラレコ1 by はるか(長田春風)さん

前回の記事でも触れました通り、複数名で1つのグラレコをするという「ぐらみ隊」チャレンジもあり、番組の裏でも笑いが絶えない回でした。

イベント当日のグラレコ2 by おかぴ隊長&ぐらみ隊
「心理的安全Barフジツボ」Part2 スタッフロール (所属は2022年6月開催当時)

以上、「Barフジツボ」Part2の企画の流れ + 当日の様子でした。

淺間さんも、シン・ミドルの皆さんも、そしてふくちゃんも、進んで新しい視点を得ていこうという姿勢は全く同じでしたね。互いに敬意を払いつつフラットに談笑されており、そこに世代差は感じられませんでした。「Z世代」という言葉がカッコイイ気がしてついつい使ってしまいましたが、世代で一括りにする考え方はもう古いぞ、と自分にツッコミを入れた次第です。はい、すみません。


次回は「Barフジツボ」を支えるチーム作りについて、よく聞く質問にお応えする形で書いてみたいと思います。
ノリと勢いで面白企画を実施してきたこのチーム、いかにして作られたのでしょうか?お楽しみに。
次回へ続く

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