”好き”を仕事に 組織の中に新しい役割を創る

高野 一樹 / Kazuki Takano Fujitsu Works
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自分のクリエイティブの軸の1つとして「映像制作」がある。映像制作はもともとスキルがあったわけではなく、趣味でカメラが好きだったところから始まった。当時担当していた仕事のイベントで、誰にも頼まれずに自ら記録用に動画を撮ったことが動画制作を始めるきっかけとなった。制作した動画が好評で周囲に認知されるようになり、趣味から始めたことが仕事としても声がかかるようになって、自分の強みへとなっていった。

2020年にRidgelinezが創設され、新たに作られるオフィスに撮影スタジオを作ることになった。「動画制作」を強みとして認識されていたので、スタジオの設計を任されることになった。スタジオ設計をきっかけにコーポレートブランディングや映像のディレクションも任されるようになり、動画制作が「自分の仕事」になった実感がある。

最初は「やってみたい」からはじまったことが自分の軸となった。自分の好きなことから新しい仕事を創ることに興味がある方は、ぜひ今回の記事を読んでいただきたい。何かヒントを感じ取ってもらえると嬉しい。

きっかけは自分の行動から

自分の軸の1つとして「映像制作」がある。映像制作はもともと学校で学んだり、高いスキルがあったわけではなく、個人の趣味として人や風景を撮影することが好きなだけだった。そんな時、同じチームのメンバーがプロジェクトで携わっていたイベント「SOUND & CITY」で、『イベントの様子を写真に撮って欲しい』と写真撮影を頼まれたことが、後の動画制作に繋がるきっかけとなった。

SOUND & CITYは、複数の企業やDJ、アーティストなどが参加する実験的な音楽も含めた体験を、家族や友人と楽しむイベント。そのイベントの中で、富士通とヤマハがコラボレーションして開発した靴をインターフェースとしたプラットフォーム「interactive shoes hub」を来場者の方に体験してもらっていた。

靴を履いた人たちは、初めての体験にすごくわくわくしていて、その様子を写真として撮影を続けていた。

ただ、このイベントの面白さを伝えるには動画の方が伝わるだろうと思い、現場で写真だけでなく動画を撮影し、その後すぐにBGMをつけ編集。動画の撮影や編集は、誰にも頼まれたわけではなかったが、そのイ

ベントの様子や人々が楽しんでいる姿を、多くの人に伝えたいという気持ちで作業に没頭し、たった1日で動画を完成。早くこの動画をみんなに見てもらいたいと思ったし、自分でもなんども完成した動画を見直して、早くみんなに見てもらいたい気持ちだった。

SOUND & CITY

周りに喜ばれる体験 自分の得意・強みが見つかる

制作した動画をチームのみんなに見せたところ「え!何これ?いいじゃん!」と気に入ってもらえて、様々な場面で紹介していただいた。そしてこの映像をきっかけに動画制作がどんどんと自分の軸になっていくことになる。そんなとき、動画の評判を知ってくれた後輩から、自身が担当する展示会「らくらくデザイン展」を紹介するための動画制作をお願いできないかと相談を受けた。

らくらくデザイン展は富士通が提供している「らくらくホンシリーズ」のこだわりをデザイナーたちの言葉で伝える対話型展示。1回目はキャリアのお客様向けに行なわれたが、一般のお客様にもデザイナーがどういった心持でモノづくりに取り組んでいるかを伝えるのが趣旨。そこで、そんな手触り感を動画で伝えられないかということだった。

当時は、撮影や動画編集はあくまで空いてる時間での自主的な取り組みだったため、撮影に充てられる時間は2時間程と限られるし、編集に使える時間も5〜6時間が限度だった。ただ、良いものを作りたい言う気持ちから、別なチームで音楽制作ができるメンバーに声をかけBGMをオリジナルで制作し、1日で展示会のイメージを伝えるムービーが完成した。

この2本の動画をきっかけに動画の仕事が周囲に認知されるようになった。趣味から始めたことが仕事として認識され次々と依頼を受けるようになり、自分の強みになっていった実感がある。

らくらく展


らくらく展についてもっと知りたい方はこちらの記事へ

1つの仕事として認められた体験

2020年にRidgelinezが創設されると、自分も富士通のデザインセンターから異動することになった。Ridgelinezは人起点で顧客の課題をDXによって解決するコンサルティング会社。会社設立に合わせて企業理念を反映するオフィスも新たに作られことになった。

お客様の抱える課題に対し自社の強みをアピールするために、映像制作に力を入れたいという意向があった。そして、その制作環境として撮影スタジオも設けることになった。その頃には私が「動画制作のプロフェッショナル」と周囲に認識されていたので、そのスタジオの設計を任されることになった。しかし、当時の自分は動画制作の経験はあるが、空間としてのスタジオを設計した経験はない。それどころか、スタジオで撮影した経験すらもなかった。しかし、一からスタジオを設計できる機会は今後二度とないと感じたので、チャレンジしてみることにした。

とはいえ、設計に関しては右も左もわからない状態だったため、まずはひたすらインプットを実行。スタジオや撮影に関する専門誌や雑誌を買い集め、その中で目指すべきスタジオの姿が少しづつ見えてきた。今考えれば当たり前のことではあるが、まずスタジオの環境や設備は全て「白か黒の色」であることに気が付いた。スタジオに色のついた物があるとその色が反射し、被写体の色に影響を与えてしまうからだ。そのため、スタジオの設備や機材は白と黒の色のもので統一。そして最もこだわったのが、スタジオで使用する撮影用のスツール。スタジオの専門誌にも掲載されていた、スタジオのコンセプトにも合うキャスター付きアルミのスツール。型番の記載もなかったが、インターネットや雑誌を何度も行き来しながらやっと型番が判明。しかし、そのスツールは美容師さんむけのサロン専用の特注品だった。メーカーからは美容院にしか卸していない商品であり、通常のルートだと手に入らないものだった。しかし、内装をお願いしている代理店に掛け合い、メーカーと直接交渉した結果、最終的に入手することができた。

いろいろなことが手探りではあったが、スツールも含めスタジオの使い勝手は業務にフィットし、Ridgelinezのコンセプトにも沿った理想の空間となった。設計をサポートしてくださったみなさん、そしてスタジオ設計を任せてくれた上司に本当に感謝している。そして、スタジオを使いこなせるよう、自分のスキルやアウトプットも高めていきたい気持ちも生まれていった。そしてその後は、スタジオを活用してRidgelinezのコーポレート・ブランディングに関わる映像制作を、リーダーとして任されるようになり「自分の仕事」になった実感がある。

スタジオの様子
スタジオの様子
制作した企業紹介ムービー

今のチームや組織に映像制作の役割がある意義

はじめは「やってみたい」からはじまったことが、アウトプットを出し続けたことで周囲に評価され自分の軸となる仕事になった。自分の軸をみつけたいが何から手を付けたらわからない方も多いと思う。まずは依頼されたかどうかに関係なくても、自分が感じる「これをやったらいいんじゃないか?」「やってみたい!」という気持ちに目を向けてみる。そしてちょっとずつトライしてみることがまずは大切だったと感じる。

そしてトライしたことが評価されれば、少しづつその周りに広がっていき、徐々に仕事として依頼が来るまでに広がっていく。その過程で常に期待を超えることは一番大事だが、それが好きだからこし自然とできていると感じている。

新しい仕事を創ることに興味がある方に、今回の記事が何かヒントになると嬉しい。

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