幹部社員のつながりが紡ぎ出すこれからの時代のマネジメント

村瀬 周子 / Chikako Murase Fujitsu Works
  • 組織デザイン
  • マネジメント変革

「マイクロマネジメントのままではいけない」など自身のマネジメントに課題を感じているミドルマネジメント層の方は実は少なくないはず。それでも変えられないのはなぜでしょうか?どのようなマネジメントに変えるべきかわからない、忙しくて時間をかけられない、マネジメントスタイルを変えたことによる業績不振が心配…耳を傾けると様々な理由が聞こえてきます。社員の力を引き出し、育てるマネジメントへ変わっていくために、「部下のリアルを理解する」、「ありたいマネジメント層としての姿を描く」、「気づきを生み、手助けし合えるマネジメント層のつながりをつくる」ことでアプローチしました。
2018年度 Team WAA!(*1)「自分の一歩が会社を変えてるWAA!!」賞 受賞。

Director村瀬周子
Designer村瀬周子、小針美紀、諏訪真梨、三柴加奈子

マネジメント層こそ変化が求められる時代

テレワーク制度の本格運用など働き方改革が進むにつれて、富士通の営業部門Aではマネジメントに関する課題が浮かび上がってきていました。例えば、部下からは『テレワーク制度ができたが、これまでのマネジメントスタイルは離れて働くことが想定されていない』、『過去の成功パターンに当てはまらないものは組織として却下されるされがち』といった声が上がっていました。営業部門Aの部長32名と共に、これからの時代に求められる「社員の力を引き出し、育てる」マネジメントの姿を具体化し、アクションを起こす約8ヵ月のプログラムを実施しました。

1.気づく~私は本当に部下のことを理解しているのか~

「社員の力を引き出し、育てる」マネジメントの具体的なイメージを膨らませるインプットを得る。部下がどれだけ熱量を持って働いている状態か把握する

 まず始めに、具体的な事例も交えながらこれからのマネジメント必要なマインドとアクションにつなげるヒントを外部有識者から学び、部長たちは社員の力を引き出し、育てるマネジメントのイメージを膨らませました。また、部下がどれだけ熱量を持って働いている状態にあるか12個の視点から測定するリサーチを部門全体に実施しました。分析結果は、部長が部下との認識の相違点に気づくきっかけとなりました。

部下がどれだけ熱量を持って働いている状態にあるか12個の視点から測定するリサーチ

2.考える~私のありたい姿とはどういうものか~

目指すマネジメントを具体的に描き、それを実現するためのアイデアを考える

 これからの時代の部長の役割、マネジメントについて具体的な姿を一人ひとり視覚化しました。理想の姿を実現するためのアイディエーションでは、各自の課題に合わせたアイデアを参加者同士の対話を通して考え、今年度に実施するアクションを各自決めました。

様々な角度からマネジメントを捉えるワークを通して個人の本音が引き出されていく

3.やってみて振り返る~”私たち”だからできること~

各自が設定した施策と共通の課題に対する施策を実施する。施策の進捗、悩みや実践知を共有する部長同士の定期的なピアメンタリングを実施

 各自設定した施策をそれぞれで実施しました。どの部長にとっても共通の課題であった「部下とのコミュニケーション強化」と「各部下の特性を考慮したマネジメントスタイルの調整」については、全員共通の施策を6ヵ月間継続して行いました。前者は6分間のライトな1 on 1ミーティングを部長と部下がお互いに実施し、後者は、望ましいマネジメントを11個の観点で互いにすり合わせるミーティングを実施しました。また、1.5ヵ月に1回部長全員が集まる機会を設け、各自の施策の進捗、悩みや実践知を共有する90分のピアメンタリングを6ヵ月間行いました。

ピアメンタリングの回数を重ねるごとに互いへポジティブな影響を与える関係性へ

マネジメント層同士のつながりが継続的な変化につながる

営業部門Aでは、これまでのマネジメントスタイルであっても部門の目標はクリアできていました。そのため、「なぜこのプログラムに自分が参加する必要があるのか」といった声も始めはありましたが、継続的に部長同士でピアメンタリングを行い、対話が深まっていくにつれて、参加者は変化を受け入れる姿勢へ変わっていきました。プロジェクト終了後のアンケートでは、70%の部長が「自分のマネジメントに変化あり」と回答しています。また部下へのアンケート調査でも、プログラム前半と後半では、発言や行動にポジティブな変化を感じている人が25%増えました(35%→60%)。

実はこのプロジェクトのデザイナーの中に幹部社員はいませんでした。私たちデザイナーが参加者の皆さんをプロジェクトゴールに向かってリードしなければならないという思いから、マネジメントについて理解を深めるよう努めてきました。例えば、各種マネジメント論を勉強したり、自組織の幹部社員にヒアリングしたり、参加者お一人お一人のプロファイルを作成したりしてきました。しかし、最終的には参加者である幹部社員と共に答えは創っていくものではないかと考え、ピアメンタリングを通して幹部社員同士のつながりを作る支援をすることにしました。プロジェクトを終えて、組織の外側からの力だけでなく、組織の内側の力を活かすことがより継続的で本質的な変化を生むものだと実感しました。

*1: Team WAA! は、 誰もがいきいきと自分らしく働き、豊かな人生を送れるような「新しい働き方」に共感し、実現していこうとする、企業・団体・個人のネットワークです。

DESIGNER

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